映画「白ゆき姫殺人事件」、意外と観ていない人が多いのではないでしょうか。
※ネタバレなしのレビューです。
「白ゆき姫殺人事件」公式サイト
<あらすじ>
国定公園・しぐれ谷で誰もが認める美人OLが惨殺された。
全身をめった刺しにされ、その後火をつけられた不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まる。
彼女の名前は城野美姫。
同期入社した被害者の三木典子とは対照的に地味で特徴のないOLだ。
テレビ局でワイドショーを制作するディレクター・赤星雄治は、彼女の行動に疑問を抱き、その足取りを追いかける。
取材を通じてさまざまな噂を語り始める、美姫の同僚・同級生・家族・故郷の人々。
「城野さんは典子さんに付き合っていた人を取られた……押さえていたものが爆発したんだと思う、あの事件の夜」
「小学生の頃、よく呪いの儀式をやってたって。被害者の殺され方が呪いの儀式と同じでしょう?」
「犯人です、間違いありません!」
テレビ報道は過熱し、ネットは炎上。
噂が噂を呼び、口コミの恐怖は広がっていく。
果たして城野美姫は残忍な魔女なのか? それとも──。
ネット、主にTwitterを出力装置とした、人の記憶・推測の混同と曖昧さ、悪意のない情報拡散の怖さと野次馬気質な日本人のどうしようもなさ、現代の日本文化の怖さなどを詰め込んだ作品でした。
その嫌らしいまでの演出に胃がキリキリする謎の快感。
美人OLが滅多刺しにされた上に焼死体で発見された。
綾野剛演じるTV局の制作スタッフが取材を進めると浮かび上がった犯人と思わしき人物。
それが井上真央扮する被害者と同僚の地味な女性。
「彼女が犯人だろう」という先入観の前に、関係者の記憶と情報は捻じ曲がっていく。
その井上真央の言動を関係者の証言から追っていく構図の本作。
同じ出来事で同じ場にいた人でも、記憶は無意識に自分の都合の良い方向に捻じ曲げられている。
つまり「語り手と細部が異なる同じ状況」を何度も観せられるのである。
同じ場面でも語る人が変われば、言葉のニュアンスは異なるし、脇に置いてある置物だって異なる。
人の記憶とはそれほど危うげなもので、そしてそれを画にしている。
人の偏りがちで不安定な記憶を映像にしているのだ。
観る度に「あぁ...」と胃が痛くなってくる。
この映画における「本当にあった事」は終盤明かされる真実のみで、その殆どの映像が「インタビューを受けた語り手の記憶にある出来事」。
同じカメラワーク、同じ台詞。
なのに言っている人やちょっとした細部が異なる。
作り手の仕掛けが凝っていて、唸るしかない。
Twitterでの呟きに宿る「理由のない悪意」。予期せぬ情報拡散。
そしてそれすらも、誰かが目論めばTwitter世論を操作する事も出来るというインターネットの怖さとズルさ。
ステマやまとめサイトが騒がれる現代の日本だからこそ成立するこの作品。
鮮度が大事な作品でもある。
つまり観るなら今、確実にこの2014年に観ないと駄目。
今の日本のインターネットやSNS環境の怖さと闇を描いた映画だからだ。
例えば、2014年の今にガラケーを用いて携帯電話の怖さを描かれても何も面白くない。
この映画もまさにそれ。
数年後にDVD・Blu-rayやらで観ても、響かないだろう。
そして何より、井上真央の素晴らしい演技力に感服。
「ちょっと挙動不審で根暗でダサい女」を見事に演じきっている。
どうしても「キッズウォー」や「花より男子」のイメージが強いので勝気な演技が記憶にあるが、こんな演技も出来るのかと感動してしまった。
ゴシップ好きの女、根っからの女ったらしな男、高飛車で性悪な美人、ネットでの声名を重んじるTV局員、変なハンドルネームを付けて好き勝手呟くTwitterの無数のアカウント。
どうしようもなくナチュラルに狂った現代の日本人模様。
まさに、リアルなエグさで胃が痛くなる秀作。
観るなら今です。
2014年の今です。
特にTwitterでいつも情報の波を眺めてる人にオススメの1本。
ただし、手の込んだ殺人トリックや大どんでん返しを求めて観る映画ではないかもしれません。
人の記憶とネットの闇を、この作品は上手にメッセージに昇華させてます。
not mine.credit and source:yukkks453145
No comments:
Post a Comment